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V 戦前の原資料 1.社会・労働運動関係原資料

(1) 労働組合関係資料

 “原資料”とは謄写版刷の大会資料やビラ,ステッカー等をいうが,その中の労働組合関係約380ファイルについて眺めてみたい。

 これらの物の多くは,戦前の資料係が組合大会やメーデーに出かけて直接収集したもの,または研究所が戦前行った労働組合・消費組合・右翼団体・労働学校等の各調査の時に送られてきた調査票・規約・綱領等であり,争議関係の資料は,それに関係した個人から購入したものが多い。その他,当時の高野所長以下,各研究員が中間派の政党や労働組合の指導者と個人的に親しかった関係上,その“つて”で本部資料をまとめて購入したものがある。労働組合資料も,中間派の日本労働組合同盟とその後身である全国労働組合同盟の本部資料をまとめて購入した物が半数近くを占めている。

 この日本労働組合同盟関係の資料は,1926年の結成から1936年の全日本労働総同盟へ合同するまでの約10年間,145ファイルを数える。なかでも1927年4月10日の第1回全国大会の規約,宣言,代議員信任状,鉛筆手書き速記録,祝辞,祝電をはじめとする各年の大会資料は貴重である。また,指令・中央委員会報告書等の本部資料も見逃せない。傘下の組合の資料も豊富で,関東合同(本部へ送った支部連絡票や争議紛議調査票まであり,組合同盟・全労の中でも一番よく揃っている),関東金属,日本運輸,全映,関東革技工,日本鉱夫組合,日本紡織等の発行文書,とりわけ1930年代の労働争議資料であるビラ,ステッカー,指令,檄文等珍しいものも多数含まれている。大争議として知られている1930年の東洋モスリン争議(会社側より父兄宛て文書,従業員宛て文書など数多い),1931年の住友製鋼所争議,トーキーが導入されることによって失業する弁士や楽士達の1931~1933年のストライキ,1935年の東京印刷争議(会社より各個人に宛てた出動要請状,解雇手当領収書,解雇手当明細袋の束,行商控,救援帳にいたるまで)等の資料もある。

 各地方連合会も大阪地連を最大規模に,北海道より九州まで網羅し,最近活発に行われている県史や地方史編纂室の利用が多い。

 時期的にはこれより前になるが,総同盟資料が1920年より1939年にわたって約35ファイルあり,内容は各年の全国大会の資料をはじめとして多様である。特に第1次分裂(1925年5月,評議会へと分裂)から第3次分裂(1929年9月,除名派は全国同盟を結成)関係の資料は比較的よく揃っている。また争議関係としては1921年の三菱・川崎造船所争議の資料が,有名な“最終宣言”ビラをはじめとして,兵庫県警察部の警告ビラを含め多数ある。また1921年の石川島造船所争議の折のカンパ帳も残されていて,署名者に蝋山政道,映画館のオーケストラ部員,女髪結い,洲崎の娼妓まであり,支持層の広さがうかがえる。

 評議会・全協の資料は1925年より1933年まであり,高岡孟子氏旧蔵の資料も含まれている。これら評議会資料の一部は,1957年から10年間にわたって『労働運動史資料・日本労働組合評議会資料』(第1~12集)としてタイプ印刷で復刻されたが,未完のまま中断している。

 代表的な争議としては1929年12月~1930年2月のゼネラルモーター争議がある。全協の非合法時代のものには満蒙出兵反対,戦争反対,ソビエトを守れというようなビラが数多く見られるようになる。

 前記以外の原資料のある組合名を列記すると,全産全国会議,総評,中央一般,総連合,交総,海員・司厨,全国自連等アナ系組合,官公業関係,俸給者関係,映画関係,電気・ガス関係,愛国労働関係,自労関係,製陶関係,日本労働同盟,全国総連合運動等統一運動関係などがある。その他大原社研として誇れるものに,『日本労働年鑑』作成のための組合調査があり,1923(大正12)年~1936(昭和11)年の調査票が保管され,当時の組合の結成年月日,組織人員等を知る上で有益である。

(谷口朗子)

『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より

更新日:2014年12月22日

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