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IV 定期刊行物 3.その他の定期刊行物

(5) 通信類

 社会労働運動関係の通信類は,第一次世界大戦後運動が激しく展開されるようになってくると,争議などの状況をいち早く知りたいという要求にあわせて誕生した。1925年8月産業労働調査所によって創刊された『産業労働時報』(~1927年5月第一次,復刻済み)はそのような役割ももっていた。それにあわせて,さまざまな商業的通信類も経営的に成り立つようになって,さかんに発行されるようになった。これらのなかで,最も豊かな内容を持っているのは『社会運動通信』(復刻済み,不二出版)であろう。これはすべて所蔵しているが『日本社会運動通信』 として1928年5月に創刊され,1940年9月に廃刊した。同紙には当時の運動団体の発行した資料をほとんどそのまま掲載したりする例が多いため,現在史料的に大変貴重なものとなっている。

 大正期の古いものでは『中外社会通信』がある。これは1923年12月に創刊されたものであるが,当研究所には1924年9月から10月までの全6号しか存在しない。『労働通信』も古いものだが,これもきれいには揃っていない。1924年12月から25年1月,27年2月(62号)から30年5月,34年1月から7月まであり,以後『労働経済通信』として続いている。これは1934年8月から35年6月まで所蔵している。『労資通信』などのように一部の時期(1925年12月,1321号~1335号)のものはあるがあまり役にたたないであろう。

 これに対し,『労働問題通信』と『社会時事通信』はかなり系統的にある。前者は1926年217号以後36年690号まで(1923年創刊)所蔵されている。後者は1926年7月の創刊号から27年10月まである。『社会運動通信』がカバーしていない時期だけに貴重である。この両者には内容上若干違いがあり,前者が東京の運動に強く,後者が大阪の運動に強い。この二つをつき合わせて検討すると,いくつかの事実を発見できるであろう。ほかには,植民地や対外的な運動を扱った『東邦通信』(1926年3月創刊。 28年2月から29年4月まで所蔵),日本の運動中心で無産政党・労働組合運動に詳しい『極東社会運動通信』(1928年4月創刊号~30年6月)などの所蔵資料が注目されてよいと思われる。

 東京の『社会問題通信』は,1928年9月(創刊号)から29年9月までしかないが,大阪の『日本労働通信』は,1928年2月(創刊号)から37年12月までとかなりの時期をカバーしている。そのほかには『神戸社会運動通信』(1931年11月〈21号〉~32年11月),『労働週報』(1932年6月〈243号〉~34年9月)などがある。なお,産業労働調査所の『産業労働通信』(1932年8月~33年4月)はすでに復刻済みである。

 社会労働関係の通信メディアは,1945年8月の敗戦をきっかけに復活した。GHQは民主化政策の一環として言論出版の自由を認め,労働組合の結成を奨励した。産別会議の10月闘争,2・1ストなど労働運動の高まりや,農民運動をはじめ各領域の社会運動の高まりの中で,相次いで通信出版社が設立され,日刊・週刊・旬刊の通信紙が創刊された。

 なかでもとくに注目されるのは,1945年10月に浅川謙次が創刊した日本労農通信社であろう。浅川は,同年11月15日に『日本労農通信』(週2回刊)を創刊し,折からの労働組合結成や争議動向,農地改革闘争を主とする農民運動,さらに消費・協同組合運動,婦人運動,部落解放運動,学生運動など,揺籃期の日本社会運動の実態を克明に記録し,報道した。占領期の労働運動の基本文献の一つに,労働省編『資料労働運動史』(各年版)があるが,これの1945・46年版~49年版は,浅川らの『日本労農通信』の記事をベースにまとめたものであった。

 このほか,占領期の通信として,社会運動通信社の『社会通信』(週刊),産業労働調査所の『労働週報』,日本産業労働調査局の『産業労働調査月報』,日刊労働通信社の『日刊労働通信』,新経済社の『社会労働通信』,産業経済調査会の『産業通信』,産業厚生時報社の『産業厚生時報』(旧『日本労働通信』の改題)などが所蔵されている。このうち新経済社の『社会労働通信』は,かつて日本共産党の農民部員で,のち“多数派”のメンバーとして活動した宮内勇が創刊したものである。また,『社会通信』は,株式会社野田経済が編集協力を行っていた通信で,産別会議や左翼運動に関する報道とその分析に定評があり,近年,閲覧の請求が多い文献の一つである。なお,『労働週報』の発行機関である産業労働調査所は,1927年3月に設立された,野坂参三が主任のそれではない。

 これらの通信類はほとんどセンカ紙で刷られていて,劣化が激しく,頁をめくるだけで折れ,あるいは複写のつど崩れてしまう状態にある。早急にマイクロフィルムに収める必要があるだろう。それまでは閲覧サービスだけにとどめ,複写については控えていただきたいと思っている。

(梅田俊英・吉田健二)

『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より

更新日:2014年12月22日

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