『日本労働年鑑』第68集(1998年版) 6月25日刊行
1920年以来毎年(戦時中10年間を除く)、大原社会問題研究所から刊行されている『日本労働年鑑』の今年度版が、6月25日に刊行されます。本書は、1997年1年間の日本の社会・労働問題および運動の動向、それらとかかわる政治動向、労働・社会政策などを中心に、できるだけ客観的に記録した日本唯一の労働年鑑です。
本書が対象としている1997年は、深刻な景気の後退に直面し、日本経済の問題点が明るみに出た一年でした。4月の消費税率アップによって消費不況が深まり、アジアの金融危機や銀行の貸し渋りなどもあって、倒産や失業も深刻化しました。拓銀や山一証券などの倒産によって金融界の「護送船団」方式は破綻し、第一勧銀や野村など四大証券の総会屋への利益供与なども発覚しました。
景気の後退に対して政治の対応は後手後手に回り、「政策不況」と言われるほどでした。長期不況の中で、依然としてリストラや人員の削減がつづき、「日本的経営」の見直しも進行しています。従来とは異なった経済・経営環境のもとで、労働組合・労働運動の存在意義や役割が問われる場面も次第に増えてきました。このような97年の日本を、本書は対象としています。
この第68集も、11年前から採用した5部構成をとっています。すなわち、序章と特集を別にして、全体を、(1)労働経済と労働者の生活、(2)経営労務と労使関係、(3)労働組合の組織と運動、(4)労働組合と政治・社会運動、(5)労働・社会政策の5部に分けています。
『日本労働年鑑』の詳しい目次については、こちらをご覧下さい。
特集では、「現代日本の社会福祉労働」が取り上げられています。高齢社会となった日本において、社会福祉領域で発生する諸問題への対応が強く求められるようになってきており、特に要介護高齢者に対する社会福祉サービスのあり方が問われるようになってきました。このような状況を踏まえ、ホームヘルプサービスを中心とする社会福祉労働の現状と課題を明らかにしようというのが、本特集の意図です。
1997年は、「労働組合期成会」の設立、「鉄工組合」の発足から、100年という記念すべき年でした。この日本における労働組合の出発を記念し、その事業を顕彰する意を込めて、「日本労働組合の誕生」に関わる史料やそれに貢献した人々などを本書のグラビアで取り上げました。労働組合の結成に尽力された先達の労苦に思いを致す、よすがとしていただければ幸いです。
同年鑑、または大原社研の出版物のバックナンバー等についてはここをご覧下さい。
なお、当研究所では、本年鑑に関連する資料や論文を、当研究所の月刊誌『大原社会問題研究所雑誌』に収録しています。本年鑑とともに、活用していただければ幸いです。
『大原社会問題研究所雑誌』の定期購読についてはここをご覧下さい。"
『日本労働年鑑』第68集(1998年版)
法政大学大原社会問題研究所 編
旬報社 刊
定価 15,000円+消費税
全国書店で販売中
『日本労働年鑑』第68集の目次
巻頭グラビア:日本の労働組合誕生100年
はしがき
序章 政治・経済の動向と労働問題の焦点
1 国際政治
2 国際経済
3 国内政治
4 国内経済
5 労働問題
6 労働運動
特集 現代日本の社会福祉労働-その現状と課題
はじめに
第1章 社会福祉労働をめぐる状況
1 社会福祉労働に従事する者の増加
2「社会福祉労働論」の展開
3 インフォーマル部門の拡大
第2章 社会福祉労働拡大の背景
1 家族形態の地域性
2 高齢化の地域性
3 サービス供給主体の多様化
第3章 社会福祉労働の現状
--ホームヘルプサービスの提供過程
1 ホームヘルプサービス利用者の現状
2 ホームヘルプサービス供給主体の現状
3 住民参加型在宅福祉サービスの意味
結びに代えて-社会福祉労働の課題と展望
第1部 労働者の状態と生活
1 労働経済の動向
1 景気動向と労働力需給
2 就業・雇用構造
3 賃金と労働時間
2 労働者の生活と意識
1 消費者物価の動向
2 労働者家計の収入と支出
3 労働者の生活意識の変化
3 女性労働
1 就業・雇用の動向
2 女性の雇用・失業状況
3 女子学生の就業状況
4 女性労働者の賃金
5 男女雇用機会均等法、労基法の改正
4 労働災害・職業病
1 労災・職業病の概況
2 労働災害防止のための重点施策
3 快適職場形成に向けての取り組み
4 98年度労働省重点施策
第2部 経営労務と労使関係
1 経営者団体の動向
1 経済・社会の構造改革
2 賃金関係
3 雇用関係
4 教育関係
5 年金、医療、社会保障関係
6 労使共同行動
7 その他
2 経営労務の動向
1 経営者の関心
2 人事・労務管理の課題と実施状況
3 企業のリストラと雇用調整
4 賃金制度と年俸制
5 女性の人事・労務
6 グループ経営と社内分社化
3 主要産業の動向
1 全体の動向
2 鉄 鋼 業
3 自動車産業
4 電機・電子産業
5 造船・重機産業
6 商業・流通業
7 金 融 業
8 交通・運輸産業
9 建設産業
第3部 労働組合の組織と運動
1 労働組合の組織状況と労働争議
1 労働組合の組織状況
(1) 労働組合の組織率と組織状況
(2) 組合員数増減の諸要因(1996年)
(3) 主要連合体の組織状況
(4) 都道府県別組織状況(1996年)
2 産業別労働組合組織の動向
3 労使交渉と労働争議
(1) 労使交渉の現状
(2) 労働争議
2 労働組合全国組織の動向
1 連合(日本労働組合連合会)
(1) 組織状況と概況
(2) 運動方針と諸課題への対応
(3) 政党との関係と政治路線
(4) 国際活動
2 全労連(全国労働組合総連合)
(1) 組織状況と構成
(2) 運動方針と諸課題への対応
(3) 政党との関係と政治路線
(4) 国際活動
3 全労協(全国労働組合連絡協議会)
(1) 組織状況と機構
(2) 諸課題への対応と政党との関係
4 その他の団体
3 賃金・時短闘争
1 ナショナルセンターなどの賃金・時短要求、闘争方針
2 春闘前段の労使攻防
3 春闘の本格的展開
4 97年春闘妥結状況
5 97年春闘の総括
6 97年夏季・年末一時金妥結状況
4 政策・制度にかかわる運動
1 連合の政策・制度要求と闘争
(1) 政策・制度要求の内容と重点
(2) 政策・制度要求実現の活動
2 全労連の政策・制度要求と闘争
(1) 政策・制度要求の内容と重点
(2) 政策・制度要求実現の活動
5 単産・単組の運動事例
1 行政改革、労働分野の規制緩和に抗して
2 労働時間短縮と完全40時間制の実現に向けて
3 組織拡大・強化に向けた取り組み
4 主要産別が賃金・処遇制度の見直しを提起
5 モノづくり基盤の再構築と中小企業問題
6 社会貢献・国際連帯・環境問題の取り組み
7 継続する看護婦闘争
8 注目された労働事件と連帯行動
9 その他の運動事例
6 国際労働組合運動
1 ITFTU(国際自由労連)の諸会議
2 APRO(国際自由労連アジア太平洋地域組織)
の諸会議
3 ICFTUとAPRO合同の主要な行事
4 OECD・TUAC(労働組合諮問委員会)の
諸会議
5 その他の主要な国際的活動
第4部 労働組合と政治・社会運動
1 社会保障運動
1 医療保険・保障制度をめぐる運動
2 政策提言に重点をおいた社会保障運動
3 生活保護、保育所など福祉の改善を求める運動
4 年金制度の改定をめぐる運動
2 労働者福祉運動
1 生活協同組合運動
2 労働者協同組合運動
3 労働者共済運動
4 労働金庫運動
3 社会運動の状況
1 第68回メーデー
2 沖縄・基地・平和をめぐる運動
3 反核・原水禁運動
4 反原発運動
5 戦後補償を求める運動
6 憲法、人権、先住民族問題などをめぐる運動
7 公害、薬害、自然災害などをめぐる運動
8 地球環境・自然保護運動
4 政党の動向
1 国会と各党の動向
(1) 第140通常国会
(2) 第141臨時国会
2 選 挙
(1) 衆参補欠選挙
(2) 中間地方選挙
(3) 都議選
3 民主党
(1) 1年間の動き
(2) 組織・機関紙
(3) 党大会
(4) 政策・方針
4 日本共産党
(1) 1年間の動き
(2) 組織・機関紙・財政
(3) 大会・中央委員会総会
(4) 政策・方針
(5) 労働組合との関係
(6) 国際関係
5 社会民主党
(1) 1年間の動き
(2) 組織・機関紙
(3) 全国大会
(4) 政策・方針
(5) 労働組合との関係
6 新社会党
(1) 1年間の動き
(2) 組織・機関紙
(3) 第2回党大会
(4) 政策・方針
第5部 労働・社会政策
1 労働政策
1 1997年の労働政策
2 労働白書の公表
3 労働市場政策
4 職業能力開発政策
5 労働基準政策
6 女性労働関連政策
7 第140通常国会における労働関連法案
2 賃金政策
1 97年度の人事院勧告
2 97年度地域別最低賃金
3 96年度の産業別最低賃金
3 社会保障政策
1 社会保障政策全般
2 所得保障
3 医療保障
4 保健・福祉
5 社会保障財政
4 労働判例・労働委員会命令
1 最高裁判所判例
2 下級審の重要判例
3 労働委員会命令
5 ILO
1 第85回総会
2 産業別委員会、その他の諸会議
3 技術協力その他
付 録
1 主要な労働組合の現状
2 労働組合名簿
3 労働運動・労働問題関連サイトURL一覧
4 統計図・表索引
5 事項索引
社会・労働運動年表(1997年1月1日~12月31日)