V 戦前の原資料 1.社会・労働運動関係原資料
(4) 農民組合関係資料
日農・全農の本部所蔵資料をそっくり譲り受けたため,当研究所には農民運動の全体像を把握する上での基本的資料が網羅されている。また,杉山元治郎の伝記作成の際に収集された書簡・報告書等の肉筆のものが寄贈されている。これらの資料の多くは,当研究所にしか無い貴重なものである。
当該資料は,小作争議裁判記録と共に,五階の書庫に収納されている。組合の本部資料と各府県別資料が,90cm幅の棚に20段余ある。また,同じ書庫に,協調会福岡出張所・大月社会問題調査所資料が3段余収められている。
本部資料としては,日本農民組合総本部(2段),全国農民組合総本部(3段),全日本農民組合関係資料(1段),全国農民組合全国会議派(5ファイル),大日本農民組合(6ファイル),日農総同盟(1ファイル)のものがある。各大会資料,支部調査,通達等が中心である。また,1923年から1926年にかけての日農パンフレット(第1篇~第7篇)も保管されている。
府県資料としては,日本農民組合・全国農民組合の各府県別資料(14段)がある。本部への報告書,組合員名簿,県連の大会資料等が主なものである。台湾の農民組合に関するものが1ファイル(『その他 農民組合(1)』)ある。
これらの本部資料・府県資料の一部は『日農分裂問題資料』,『農民組合合同問題資料』,『昭和恐慌下の農民組合』全3巻,『準戦時体制下の農民組合』全6巻,『日本農民組合の創立前後』の資料集にまとめられて,当研究所より刊行されている。
なお,北日本農民組合・農民自治会・皇国農民同盟関係資料等の合冊(『その他 農民組合(1)』,『その他 農民組合(2)』)や日本共産党農民部資料(『農民運動史料 農業綱領他三編(大島清先生整理)』),土地と自由社・農民闘争社の資料(1ファイル)も収蔵されている。このうち,日本共産党農民部の資料は貴重な原本である。その全文は,大島清氏の解説とともに,既に大原社研『資料室報』第217(1975年9月)号,第227(1976年9月)号,第235(1977年6月)号,第250(1978年11月)号に発表されている。
次に,協調会福岡出張所・大月社会問題調査所の資料にふれておこう。協調会福岡出張所資料は,以下の6つのファイルに収録されている。『農民組合運動』(1932年~1934年),同(1935年~1936年),『農民組合運動に関する資料綴』(1933年),『小作争議調査表』(1932年~1935年),『小作争議』(1931年~1936年),『農村雑資料,小作調査』(1932年~1935年)。大月社会問題調査所資料は,皇国農民同盟の活動を探る上で看過できない。『国際事情・雑・農民』11(1934)では,「皇国農民同盟とその最近の活動」と「皇国農民同盟の請願運動」を掲載し,『労働・農民・雑』(1935年)には,皇国農民同盟の「米穀物国営案の理由と骨子草案」および「農産物直売運動」さらには「最近における農民各層の動き―混乱せる農村政治運動」等が収録されている。
(横関 至)
『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より
更新日:2014年12月22日