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III 文庫 3.その他の文庫

(1)エルツバッハー文庫

 パウル・エルツバッハー(Eltzbacher,Paul)から譲り受けた世界屈指の無政府主義文献のコレクション。エルツバッハーの蔵書の他,その依頼で各国の無政府主義者が収集した文献も含んでいる。エルツバッハーは1868年2月18日医者の子としてケルンに生れ,ライプチッヒなどで勉強の後,ハレ大学をへて1906年ベルリン商科大学教授となり,1928年10月26日ベルリンで死去した。

 著作としては『無政府主義論』(Der Anarchismus)が1900年に刊行されている(エルツバッハー文庫中E13-14。またフランス語訳が1902年に発行されているE13-15。邦訳は1921年,聚英閣の発行)。これは代表的な無政府主義者として彼が考える7人の学説を紹介したものである。しかし,無政府主義に関する著作としてはこれだけで,あとは『ボルシェヴィズムとドイツの未来』とか国際法に関するものなどである。文庫の目録は戦前の『大原社会問題研究所雑誌』の7巻2号~3号に掲載されている。また,『大原社会問題研究所所蔵目録 戦前の部』には,文庫も一般の図書と一緒に著者名順に配列されている。文庫の分類はエルツバッハー自身の分類によるもので,大原の整理もそれを踏襲している(括弧内はその分類番号)。

 最初に雑誌(E1)をまとめ,次に無政府主義の先駆者ゴドウィン(E2),シュティルナーとその弟子たち(E3),プルードン及びプルードン主義者(E4),英米の個人主義的無政府主義者(バーク,デブス,バーナード・ショウ,タッカーなど)(E5),集産主義的無政府主義者(バクーニン,ギョーム,ピサカーネなど)(E6),共産主義的無政府主義者(代表的な著者はクロポトキン,グレーヴ,ルクリュ,マラテスタ)(E7),トルストイ及びトルストイ主義者(E8),サンジカリスム(E9),無政府主義に近い著作者(たとえばここであがっているのはカーペンター,ゲルツェン,カンプフマイヤーなど)(E10),無政府主義の国際会議(無政府主義者が参加したものを含む)(E11),無政府主義者の犯罪や裁判に関するもの(シカゴのヘイマーケット事件に関するものなど)(E12),反無政府主義の著作(マルクスなど)(E13)となっている。

 ここで見られるように無政府主義というのはかなり広範な概念で,菜食主義の運動から黒手組のようなテロ組織(?),トルストイやドゥハボール(ロシヤの急進的なプロテスタントの一派)などまでが含まれている。

 全体として,パンフレットが多いことが目につく。無政府主義者の運動は小冊子の宣伝という手段をとることが多く,前記のようにエルツバッハー自身が無政府主義者に依頼して収集したこともあって,このような一般のルートでは入手しがたいものが含まれているのは貴重である。出身のドイツの文献が豊富であることも特徴のひとつである。半面,無政府主義の本場であるフランス,イタリア,スペインについてはやや弱いといえる。まとまった定期刊行物としては『レ・タン・ヌーヴォー』『フライハイト』『レヴォルテ』『フライエ・アルバイター』などがあげられる。

(是枝 洋)

『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より

更新日:2014年12月22日

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