III 文庫 1.協調会文庫
(1)構成と特色
大原研究所創立と同年の1919(大正8)年に,政府と財界の出資により設立された財団法人協調会は,その事業の一環として図書館を設け,内外の図書・雑誌,パンフレットなどを収集した。この「協調会文庫」の全体は,和書,和雑誌,洋書,洋パンフレット,洋雑誌によって構成されている。図書などの収集の範囲は,きわめて広い。時期的には,第一次大戦後から第二次大戦における日本の敗北までが中心である。
大原研究所は,大阪から東京への移転にあたり,大阪府に約8万冊を売却し,また1945年5月の東京大空襲により,多くの図書・資料を焼失したため,戦前から残された図書(和・洋書)は約6,000冊にすぎない。協調会文庫は,その点で大原研究所の図書の空白部分をよくカバーするものとなっている。それだけに,戦前の貴重書は実に多くあり,とても紹介しきれるものではない。また,大原研究所の場合,労働組合,農民組合,無産政党など民間サイドからの資料を中心に蔵書構成が組み立てられているのに対し,官側に近い立場から収集された文献からなる協調会文庫とは,同じ社会・労働問題を扱っていても相互に補い合う関係にある。
この協調会文庫の内訳は,ざっと次のとおりである。和書2万3,500冊,和雑誌453タイトル・4,400冊,洋書8,600冊,洋パンフレット6,600冊,洋雑誌282タイトル・4,800冊。以下,この協調会文庫のうち,和書,和雑誌,洋書について,紹介することにしよう。
(早川征一郎)
『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より
更新日:2014年12月22日