7 その他
■7 その他
パンフレットの整理は主体別に、概ね編年で配列している。本欄ではその他の団体や発行所のものを収録している。
まず、目立って多いのは労働組合の啓蒙・指導書である。GHQは日本民主化をになう社会勢力として労働組合に期待し、発展・健全化のため各種の情報を提供した。『御用組合とは何か』(3701)と『全体主義と労働組合の危機』(3702)は、GHQ労働組合課が監修し「総司令部労働教育叢書」として企画されたもので、第26集まで発行されている。『GHQの労組指導方針』(3703)は、1945年10月の「人権確保に関する5大改革指令」から48年3月の全逓ストの中止指令まで72の指令、声明書、記者会見を収めていて、対日労働政策の変遷を時系列で知るうえで有用であろう。
他方、総同盟関係のものでは『日本労働組合総同盟運動方針書(草案)』(3708)や『婦人部の栞』(3707)など意外と少ない。社会党関係でも『日本社会党政策指針』(3706)があるだけである。
労働組合関係では、『新しき労組運動はいかに闘うか』(3709)、『生産管理と生産復興』(3710)など、勤労時報社の『組合運動パンフレット』が注目される。勤労時報社は産別民同系の出版社で、機関誌『組合運動』を発行していた。このシリーズでは、政党と労働組合のあり方を扱った第4集『民主的統一戦線』(細谷松太執筆)までを確認している。『全逓闘争記録』(3714)など日本労農通信社の『労農情報』シリーズは№23まで発行されている。本欄では№9のみであるが、資料寄贈を受けたさい選り分けて図書登録を行なったことによるもので、研究所にバックナンバーは揃っている。
ほかに、労働組合関係のシリーズものとして『石炭と鉄鋼』など経済再建研究会のパンフレット(3718~3720)が注目される。前述したが経済再建研究会の代表は有澤広巳であり、有澤は、片山・芦田内閣期の日本経済の復興プランすなわち傾斜生産方式を策定し指導した中心人物であった。シリーズは有澤が監修したもので、経済復興運動の研究には不可欠の資料となっている。『労働者諸君に訴ふ』(3711)、『労働組合の指針』(3715)もシリーズとして発行され、占領初期の労働運動史の一齣を記録している。
片山・芦田内閣期、最大の政策課題は経済復興であり、そのキイワードは石炭と労働力を確保する食糧の増産にあった。1946年12月、政府の取り組みとは別に民間における石炭増産運動の推進機関として石炭資本家、労働組合、農業会などを母体に石炭増産協力会が結成された。『石炭増産協力会要覧』(3721)は協力会の組織と活動について、『農業復興会議概要』(3729)は、1947年6月に日農や全農など農業団体で結成された農業復興会議(議長・東畑精一)に関するものである。
1950年6月、朝鮮戦争が勃発するなか、平和擁護と講和問題が政治争点として浮上した。平和擁護日本委員会がパンフレット型機関誌『平和』(3732)と『平和擁護』(3736)、さらにポケットパンフ『平和問答集』(3735)を発行し、全愛協が機関紙『講和新聞』のほか、『ダレス草案に答える』(3733)などの全面講和を要求するいわゆる啓蒙パンフを発行している。
これより先、1950年3月、日本の著名な科学者が『世界』に全面講和・中立・軍事基地反対を要求する「講和問題についての平和問題談話会声明」を発表した。『三つの声明』(3738)は、これに安部能成・大内兵衛らが発表した「戦争と平和に関する日本の科学者の声明」(『世界』1949年3月)などとあわせて英文で発行したものである。放送単一労組と言論弾圧反対同盟の『ズバリ真実をつくNHKものがたり』(3734)も、朝鮮戦争下における言論機関に対する抑圧の一端を明らかにしている。(吉田健二)