2 加盟単産・単組
■2 加盟単産・単組
電産(3203~3211)に関するものでは、教育宣伝部が「電産パンフレット」として発行した『日本電気産業労働組合の活動方針』(3204)と、『電産最低賃金「スライド」方式』(3206)はとくに重要である。前者は、結成大会以来の活動方針書を収めている。
電産の運動で注目されるのは賃金闘争であろう。電産は1946年の10月闘争で生活給を基本とする「電産型賃金」を獲得したが、後者はこれにインフレーションの進行に応じて賃金を調整する「スライド」制についてまとめたもので、産別会議の賃金運動に大きな影響を与えた賃金方式であった。
また電産の場合、電気事業の民主化闘争も特筆される(3205、3208、3210)。とくに『産業民主化のためわれ等は電気事業を如何に再編すべきか』(3210)は、「社会化」の視点から構想したもので、当時、日鉄従組の『鉄鋼業社会化の構想』(1947年)と相俟ち注目された。
関連して、『鉄鋼白書』(3214~15)も現在では歴史文献となっている。白書は、安本の第1回経済白書(『経済実相報告書』)にならうもので、日本鉄鋼業が構造的危機にあるとの分析のもとに前者ではその危機の実態を、後者では危機が鉄鋼資本の寡占体制に起因するとしてその是正の必要を示唆し、結論として鉄鋼業における国有化の方向を提示している。この二つは、戦後初期における鉄鋼産業の研究でも不可欠の文献となっている。
産別会議の運動で特筆されるのは、当時、経営体と同じレベルの調査・分析力を確保していたことであろう。産別会議の調査部は、1947年6月の時点で16名の部員を擁し、いずれの単産にも調査部があり、また日鉄従組であれ東芝労連であれ独自に調査部を設置して、理論研究と子細な実態調査をもって経営側に対抗していた。電工の『生産復興闘争要綱』(3229)や全国ガスの『将来の都市燃料問題と瓦斯産業の復興について』(3235)も、それぞれの調査部が策定したものである。全炭の『炭鉱』(3226)も、石炭復興運動に指針と資料を提供するために発行された。
『全日本印刷出版労働組合とはどんな組合か?』(3231)、『われらの自治労連』(3232)、昭和電工労連の『昭和労連ノ栞』(3237)も組合の綱領、活動方針、決議、組織現勢などを収録したものである。当時、この種のパンフレットはどの単組においても発行されていた。
単産・単組のパンフレットで興味深いのは、全造船の『船をつくらせろ署名運動のやり方』(3225)、『昭和電工事件はなぜ起ったか』(3238)である。前者は、「明るい日本は造船 海運の復興から」をスローガンに、産別会議系の産業復興会議と業界の海運復興会議の協賛で展開した運動を紹介したもので、あわせて賠償緩和を求めている。『昭和電工事件はなぜ起ったか』は1948年6月に発覚し、芦田均内閣総辞職のきっかけとなった疑獄事件に関するもので、事件の真相を組合の立場で究明したものとして注目されよう。(吉田健二)