『日本労働年鑑』第69集(99年版)
1999年6月25日刊行
1920年以来毎年(戦時中10年間を除く)、大原社会問題研究所から刊行されている『日本労働年鑑』の99年度版が、6月25日に刊行されました。本書は、1998年1年間の日本の社会・労働問題および運動の動向、それらとかかわる政治動向、労働・社会政策などを中心に、できるだけ客観的に記録した日本唯一の労働年鑑です。
本書が対象としている1998年は、金融システムの不安定化、財政再建問題、戦後最大の不況など金融・経済問題で大きく揺れ、7月の参院選が焦点となりました。97年末の新進党の解党によって誕生した6つの新党は、参院選に向けて態勢を整え、いくつかの新党は民主党に合流しました。参院選では経済失政を問われた自民党が惨敗し、橋本首相の辞任によって小渕新政権が誕生したのは、ご存じの通りです。
日本経済は、前年からの景気後退がさらに深まり、これまでにない厳しい状況になりました。雇用情勢も急速に悪化し、雇用者数が戦後初めて前年を下回り、完全失業率も過去最高を記録してアメリカに並びました。雇用・労務慣行も変容しつつあり、早期退職優遇制度による雇用削減や成果主義型賃金制度の導入なども進められています。
労働政策では、改正労働基準法が成立して裁量労働制の大幅な導入への道が開かれました。改正労働者派遣法も国会に上程されましたが、結局、継続審議になりました。労基法改定問題では、当初、改定反対で連合や全労連の足並みがそろい、連合も大衆行動に取り組みましたが、その後修正案をめぐって見解が分かれ、最終的に連合は賛成に回りました。このような98年の日本を、本書は対象としています。
この第69集も、12年前から採用した5部構成をとっています。すなわち、序章と特集を別にして、全体を、(1)労働経済と労働者の生活、(2)経営労務と労使関係、(3)労働組合の組織と運動、(4)労働組合と政治・社会運動、(5)労働・社会政策の5部に分けています。
『日本労働年鑑』の詳しい目次については、こちらをご覧下さい。
特集では、「国際労働組合運動の50年」が取り上げられています。この特集は、第2次世界大戦後における国際労働組合組織の歴史と現状をテーマとし、国際自由労連、世界労連、国際労連などの活動を振り返り、これらの組織と日本の労働組合との歴史的な関わりについても明らかにしています。また、89年のソ連・東欧の激変以降における国際労働組合組織の動向についても、詳しい情報が提供されています。このほか、これまであまり知られていなかった、国際自由労連のアジア・太平洋地域組織、国際産業別組織、経済協力開発機構の労働組合諮問委員会、先進国労働組合指導者会議(レイバーサミット)などについても、役に立つ情報が提供されています。
1999年2月9日は、大原社会問題研究所の創立80周年に当たります。またこの年は、法政大学との合併50周年の記念すべき年でもあります。創立記念日には、創立80周年・合併50周年記念事業として、大原デジタルライブラリー(電子図書館・資料館)を開設し、インターネットによる所蔵図書・資料の公開という新しい分野に乗り出しました。過去から未来へ、80年の歴史をふまえて、研究所の活動は新たな地平を切り開きつつあります。
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なお、当研究所では、本年鑑に関連する資料や論文を、当研究所の月刊誌『大原社会問題研究所雑誌』に収録しています。本年鑑とともに、活用していただければ幸いです。
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『日本労働年鑑』第69集(1999年版)
法政大学大原社会問題研究所 編
旬報社 刊
定価 15,000円+消費税
全国書店で販売中
『日本労働年鑑』第69集の目次
はしがき
序章 政治・経済の動向と労働問題の焦点
1 国際政治
2 世界経済
3 国内政治
4 国内経済
5 労働問題
6 労働運動
特集 国際労働組合運動の50年
第一章 東西体制下の国際労働組合組織
一 世界労連の成立と分裂
二 国際自由労連の結成
三 両組織の対抗と変動
四 東西体制の流動化
第二章 国際労働組合組織と日本の労働組合
一 世界労連・自由労連の結成と日本の対応
二 総評のICFTU加盟否決
三 全労・同盟のICFTU一括加盟
四 総評の中立方針
五 ILO活動への支援と西側との交流
六 労働戦線統一とICFTU加盟
第三章 国際労働組合組織と運動の現状
一 東側労組の再編
二 90年代のICFTU
1 二つの大会と組織の拡大
2 地域組織と活動の強化
3 活動の重点
4 ICFTU-APRO
5 ETUC
三 ITSの現況
四 90年代のWFTU
五 WCLの現状
六 TUACとレイバー・サミット
1 性格と組織
2 機構と運営
3 OECDとの協議
4 レイバー・サミット
5 労働組合声明
6 雇用サミット
第一部 労働経済と労働者生活
Ⅰ 労働経済の動向
1 景気動向と労働力需給
2 就業・雇用構造
3 賃金と労働時間
Ⅱ 労働者の生活と意識
1 消費者物価の動向
2 労働者家計の収入と支出
3 労働者の生活意識の変化
Ⅲ 女性労働
1 就業・雇用動向
2 女性の雇用・失業状況
3 女子学生の就業状況
4 女性労働者の賃金
5 労基法改定に伴う女性労働への影響
Ⅳ 労働災害・職業病
1 労災・職業病の概況
2 労働災害防止のための重点施策
3 労働者の健康状況調査と快適職場形成
4 次世紀に向けた産業保健と安全
5 98年度労働基準行政運営方針など
第二部 経営労務と労使関係
Ⅰ 経営者団体の動向
1 賃金、労使交渉
2 雇用、人事労務管理
3 コーポレートガバナンス
4 教 育
5 年金、社会保障
6 労働法制
7 その他
Ⅱ 経営労務の動向
1 経営者の関心
2 人事労務管理の課題と実施状況
3 企業のリストラと雇用調整
4 賃金制度と年俸制
5 女性の人事・労務
6 グループ経営と社内分社化
Ⅲ 主要産業の動向
1 全体の動向
2 鉄 鋼 業
3 自動車産業
4 電機・電子産業
5 造船・重機械産業
6 商業・流通業
7 金 融 業
8 交通・運輸産業
9 建設産業
10 医療・福祉
11 公 務
12 教 育
第三部 労働組合の組織と運動
Ⅰ 労働組合の組織状況と労働争議
1 労働組合の組織状況
(1) 労働組合の組織率と組織状況
(2) 組合員数増減の諸要因(1997年)
(3) 主要連合体の組織状況
(4) 都道府県別組織状況(1997年)
2 産業別労働組合組織の動向
3 労使交渉と労働争議
(1) 労使交渉の現状
(2) 労働争議
Ⅱ 労働組合全国組織の動向
1 連合(日本労働組合総連合会)
(1) 組織状況と概要
(2) 運動方針と諸課題への対応
(3) 政党との関係と政治路線
(4) 国際活動
2 全労連(全国労働組合総連合)
(1) 組織状況と構成
(2) 運動方針と諸課題への対応
(3) 政党との関係と政治路線
(4) 国際活動
3 全労協(全国労働組合連絡協議会)
(1) 組織状況と機構
(2) 諸課題への対応と政党との関係
4 その他の団体
Ⅲ 賃金・時短闘争
1 ナショナルセンターなどの賃金・時短要求、闘争方針
2 春闘前段の労使攻防
3 春闘の本格的展開
4 98春闘の妥結状況
5 98春闘の総括
6 98年夏季・年末一時金妥結状況
Ⅳ 政策・制度にかかわる運動
1 連合の政策・制度要求と闘争
(1) 政策・制度要求の内容と重点
(2) 政策・制度要求実現の活動
2 全労連の政策・制度要求と闘争
Ⅴ 単産・単組の運動事例
1 深刻化する雇用・失業問題と雇用対策
2 行政改革、労働分野の規制緩和に抗して
3 組織拡大・強化に向けた取り組み
4 賃金・処遇制度などの見直しを提起
5 65歳定年延長と高齢者就業
6 モノづくり基盤の再構築と公正取引の確立
7 環境・社会貢献の取り組み
8 看護労働の充実を求めて
9 その他の運動事例
Ⅵ 国際労働組合運動
1 ICFTUの機関会議
2 ICFTU・APROの機関会議
3 ICFTUとAPROの諸会議
4 OECD・TUAC(労働組合諮問委員会)の
諸会議
5 その他の主要な国際的活動
第四部 労働組合と政治・社会運動
Ⅰ 社会保障運動
1 医療保険・保障制度再改定に対する反対運動
2 年金制度改定をめぐる運動
3 連合の社会保障運動
4 介護保険法の抜本的見直しを求める運動
5 社会福祉事業法改定反対の運動
6 地方自治体の福祉行政後退に反対する運動
7 国立病院・療養所の統廃合をめぐる運動
Ⅱ 労働者福祉運動
1 生活協同組合運動
2 労働者協同組合運動
3 労働者共済運動
4 労働金庫運動
Ⅲ 社会運動の状況
1 第69回メーデー
2 沖縄・基地・平和をめぐる運動
3 反核・原水禁運動
4 反原発運動
5 戦後補償を求める運動
6 憲法、人権、情報公開などをめぐる運動
7 公害、薬害、自然災害などをめぐる運動
8 地球環境・自然保護運動
9 国際貢献、NPO、NGOの活動
Ⅳ 政党の動向
1 国会と各党の動向
(1) 第142通常国会
(2) 第143臨時国会
(3) 第144臨時国会
2 選 挙
(1) 第18回参議院選挙
(2) 衆院補欠選挙
(3) 中間地方選挙
3 民主党
(1) 一年間の動き
(2) 組織・機関紙・財政
(3) 党大会
(4) 政策・方針
(5) 労働組合との関係
4 日本共産党
(1) 一年間の動き
(2) 組織・機関紙・財政
(3) 中央委員会総会
(4) 政策・方針
(5) 労働組合との関係
5 社会民主党
(1) 一年間の動き
(2) 組織・機関紙・財政
(3) 全国大会
(4) 政策・方針
(5) 労働組合との関係
6 新社会党
(1) 一年間の動き
(2) 組織・機関紙・財政
(3) 第3回党大会
(4) 政策・方針
第五部 労働・社会政策
Ⅰ 労働政策
1 98年度の労働政策
2 労働白書の公表
3 雇用対策と労働市場政策
(1) 経済政策の一環としての雇用対策
(2) 98年の労働市場政策
4 職業能力開発政策
5 労働基準政策
6 女性労働に関する政策
7 第142~144国会における労働関連法案
Ⅱ 賃金政策
1 98年度の人事院勧告
2 98年度の地域別最低賃金
3 97年度の産業別最低賃金
Ⅲ 社会保障政策
1 社会保障政策全般
2 所得保障
3 医療保障
4 保健・福祉
5 社会保障財政
Ⅳ 労働判例・労働委員会命令
1 最高裁判所判例
2 下級審の重要判例
3 労働委員会命令
Ⅴ ILO
1 第86回総会
2 理 事 会
3 産業別委員会、その他の諸会議
3 技術協力、その他
●付 録
1 主要な労働組合の現状
2 労働組合名簿
3 労働運動・労働問題関連サイトURL一覧
4 統計図・表索引
5 事項索引
社会・労働運動年表(1998年1月1日~12月31日)
[Last Modified:2008.3.4] since 1999.5.23