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共催にあたって―大原社会問題研究所とポスターコレクション― (榎一江)
大原社会問題研究所は、1919 年に倉敷紡績の経営者であった大原孫三郎が「社会問題の解決」を企図して大阪に設立した研究所である。初代所長に東京帝国大学教授の高野岩三郎を迎え、学術的な調査研究を推進するに当たり、「社会問題に関係ある内外図書及び資料を蒐集し広く研究者の便宜を図ること」を事業目的の一つとした。
研究員が海外に渡航して図書の蒐集にあたったのに対し、「資料」として社会運動団体の作成した紙片を蒐集したのは資料室主任・後藤貞治であった。当時は紙くずとしか考えられなかった紙片を集め、ビラは 1 枚 5 銭で購入したという。柱(Post)に張られるためポスターと呼ばれた大型の紙片を含む「資料」はこうして蒐集され、研究所の東京移転に際しても、柏木の土蔵に収められることによって東京大空襲の被害を免れた。
戦後、法政大学と合併した研究所は『日本労働年鑑』刊行のため、社会労働運動資料の収集を継続した。現在、研究所のポスターコレクションは戦前・戦後合わせて 5500 点をこえ、研究所のウェブサイトで検索可能となっている。戦前のポスター2700 点については「OISR.ORG 20 世紀ポスター展」が開催され、法政大学大原社会問題研究所編/梅田俊英著『ポスターの社会史ーー大原社研コレクション』2001 年、ひつじ書房も刊行されている。
これに対し、今回は戦後のポスターを厳選して取り上げる。ポスターを「資料」として蒐集し、後世に残すべく整理・保存に尽力した多くの人々の手によって、我々は当時を生きた「労働者の声」を知ることができる。このポスター展示を通して、戦後日本の労働者像に迫ることができれば幸いである。
(法政大学大原社会問題研究所所長 榎一江)
更新日:2025年06月03日