II 図書 3.社会運動関係図書
(2)社会主義運動関係洋書
ここでは協調会文庫,向坂文庫,村田文庫などの図書を除いた研究所の戦前以来の蔵書,戦後に収集した図書を紹介しよう。研究所の分類では,社会主義運動関係の図書は,〈316社会党〉,〈317共産党〉にその多くが分類されている。ちなみに,1999年11月現在,316は312冊,317は654冊である。社会党関係のうち,イギリス労働党関係が150冊,ドイツ社会民主党関係も同じくらい所蔵されている。党大会議事録等の逐次刊行物を除くと,イギリス64冊,ドイツ80冊,フランス22冊,ベルギー4冊などとなっている。また,共産党関係は490冊,第1インター・第2インター関係は90冊,コミンテルン関係は170冊程所蔵されている。この他に〈301社会思想史〉を見る必要がある。一般にヨーロッパでは,「社会主義」という言葉は,思想ばかりではなく,運動をも意味することが多く,例えば『社会主義の歴史』という題名の本であれば,社会主義思想よりも社会主義運動の歴史を叙述しているケースが少なくない。例えば,ドゥロズ(Jacques Droz)の編集による『社会主義の全体史(Histoire générale du socialisme)』(全4巻,1972~78,P.U.F.)は,社会主義運動史を叙述した本であるが,301に分類されている。筆者の見るところ,〈301〉に分類されている社会主義運動関係の図書は,30冊程度ある。このうち,フランス社会党関係の図書は,7冊である。また〈487労働運動〉に分類されている場合もある。コンペール=モレル(Jean-Jacques Compere-Morel)らの編集した『労働者インターナショナルの社会主義・労働組合・協同組合百科事典(Encyclopédie socialste syndicale et coopérative de l’Internationale Ouvrière)』(全12巻,1912,13,21年,Aristide Quillet)はそこに分類されている。これ以外には,歴史関係で,234にレーテ運動の史料,235にパリ・コミューン関係の図書,238にロシア革命関係の図書がある。また,伝記は,ブランキ,ベーベル,ベルンシュタイン,ブルム,トマ,デブス,デレオン,ディミトロフ,ラスキなど多岐にわたっているが,特定の人物について系統的に集まっているわけではない。
戦前出版された単行本・パンフレットの類については,そのほとんどが『法政大学大原社会問題研究所所蔵文献目録(戦前の部)』に出ており,その有無を確認することができる。もちろん,その後に購入・受贈した古書もある。後に出版された研究書・伝記などについては,イギリス,ドイツ関係を除けば,系統的に収集されてはいない。社会民主主義政党関係の研究書では,イギリス労働党,ドイツ社会民主党に関するものが大半を占める。例えば,ドイツ社会民主党関係では,アンドレールの『ドイツ社会主義の政治的分析』,リドケの『非合法の政党―ドイツの社会民主主義1878~90』,モーガンの『ドイツの社会民主主義者たち―1864~72』,プラーガーの『USPDの歴史』などがある。この二者に比べればフランス社会党に関するものは多くはない。社会主義運動の国際組織では,第2インター関係の図書は少なく,社会主義インター関係もプロトコールがあるが,多くはない。研究書の収集という点については,1950~60年代に出版された基本的な研究書は少なく,近年出版された研究書も少ない。
年鑑・党大会議事録などの定期刊行物については,イギリス労働党,ドイツ社会民主党に関する党大会議事録など基本的な資料があるが系統的ではない(イギリス労働党,独立労働党,フランス社会党の大会議事録などについては「マイクロ資料」の項を参照)。その他には,社会主義インターの大会議事録がある。
共産党関係では,フランス共産党大会議事録のほか,戦前からの蔵書の中にドイツ共産党関係のパンフレットなどがある。そのほかには,ドイツ社会主義統一党のプロトコールが若干ある。また,コミンテルンのプロトコールには,志賀義雄氏の旧蔵書が含まれている。
(佐伯哲朗)
『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より
更新日:2014年12月22日