II 図書 2.労働問題関係図書
(4)労働運動史関係洋書
国際労働運動の資料としては全体で250点程度揃えている。国際自由労連(ICFTU)の世界大会記録が第2回(1951)から第6回(1959)までと第9回(1969)から第24回(1992)まであり,世界労連(WFTU)はドイツ語版が第3回から第6回(1945~1969)まであり,ほかに20年史もある。
また国際労働組合運動に関しての次のような大会報告書もある。
“Report on Activities, 1960~1982”(I.C.F.T.U.Asian Regional Organization)
“Report on Activities 1950~1962”(I.T.F.)
“Tatigkeitsbericht , 1951~1974”(I.B.F.G.)
そのほか,国際運輸労連,国際金属労連,国際繊維被服皮革労連,国際化学エネルギー一般労連,世界教員組合連盟などの運動史も収集されている。
また世界のメーデに関する資料も30数点あり,1800年後半から1900年初頭にかけての珍しい歴史資料がエルツバッハ文庫にある。
いくつかの例をあげてみると次のようなものがある。
Muller, Hans, Werth und Bedeutung politischer Demonstrationen, 1894
Gori, Pietro, Primero de mayo, 1897
Premier mai, [1901]
Il Primo maggio, 1902
Mai-Feier, 1906-1908
Gori, Pietro, Die Legende des ersten Mai, 1910
一般的な運動史の他に労働組合史,資料集,全国組織の大会記録,注目すべき運動の記録,活動家の伝記などにも注意を払って収集し,総数で約1,560冊所蔵している。ヨ-ロッパについては約1,040冊収集しているが,そのうちイギリス関係は370冊程である。日本が労働組合史の分野では大国であるの比して,外国ではこのような組合史を刊行している国は少ない。そのなかでは歴史好きのイギリスは労働組合史が比較的発行されている。
Arthur Marsh の Trade Union Handbook(1991)には,Bibliography of officia1 Trade Union Histories という労働組合史に関する目録が掲載されているが,そこにあげられている117冊のうち46冊を所蔵しており,約40%をカバーしている。石炭鉱業では1926年,1984年の炭鉱争議についても比較的集められている。イギリス労働組合会議(TUC)の年次大会記録は1869年の第2回大会から現在まで所蔵しており,もっともよくそろっている。
ドイツの労働運動史は360冊程ある。旧西ドイツではドイツ労働総同盟(DGB)の大会議事録は第2回(1952年)から11回(1978年)までを所蔵している。幹部会報告も1950年から1981年までそろえている。総同盟傘下では最大の260万人の組合員をもつ金属産業労働組合(IG Metall)の大会議事録は第5回(1958年)から第17回(1992年)まで,活動報告は1958年から1985年まで,労働者代表委員会は第9回(1976年)から第14回(1990年)まで所蔵し,比較的よく揃っている。戦前のドイツ全国労働組合大会は復刻がでており,1892年の第1回から1919年の第10回まで所蔵している。また,西ドイツでは1984年から『労働組合年鑑』が発行されており,年々の労働組合の活動や,統計,名簿,文献目録等が紹介されている。その他運動史に関する文献目録も多い。旧東ドイツの自由ドイツ労働総同盟(FDGB)については3~6回までの大会議事録を所蔵している。
フランス労働総同盟(CGT)に関する本は,フランスの運動史全体で100冊程のなか,40冊程あるが,大会の記録についてはマイクロフィルムで(1897年から1969年まで)所蔵している。イタリア労働総同盟(CGIL)の大会記録は,1945年の第1回から1977年の第10回までがある。ソ連は90冊ほど集めているが,全連邦労働組合の決定集が1976,79,81年から84年まである。ほかに資料集については第16回大会(1977年)と第17回大会(1982年)の分と8巻本の『ロシアにおける19世紀の労働運動』がある。アメリカについては,中央・南アメリカを含め約290冊所蔵中,アメリカ合衆国では270冊を数えている。アメリカ労働総同盟・産業別労働組合会議(AFL=CIO)の大会については1957年の第1回から1987年の第17回までがある。
そのほか,アジア,アフリカ,オセアニア等の地域についても40冊程度を収集しているが,イギリスをのぞいてはかならずしもよく揃っていないので今後の収集にまつところが多い。
なお,個人の書いた労働運動史関係の図書について,若干例を挙げると,J.B.Jefferys,The History of the Engineers,1945,E.Bernstein,Die Geschichte der Berliner Arbeiterbewegung,1907,G.Lefranc,Histoire du mouvement syndical français,1937などが目につく。
(是枝洋・小島英恵・上田洋子)
『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より
更新日:2014年12月22日