V 戦前の原資料 1.社会・労働運動関係原資料
(5) 無産政党関係資料
当研究所には,量の多寡はあるものの,主要政党の原資料は日本無産党を除き,すべて所蔵されている。それらは,会議の議案・指令・通達類・声明書を主とし,特殊テーマとしては選挙,合同問題がある。半紙・謄写版印刷がほとんどであるが,活版のパンフレットも入っている(主に大会関係資料)。全国政党を中心に,その創立順に紹介すると,まず政治研究会は1ファイル,無産政党組織準備委員会(農民労働党)は5ファイルあり,後者では議事録が揃っている。この両団体と次の労働農民党は,復刻の資料集を利用することができる(既刊6冊)。
労働農民党は,本棚約3分の2段ある。他の党も同じであるが,地方の資料は党本部に送られたものが残っているので,地域的に偏在している。例外は,当研究所が所在した大阪の労働農民党の大量の資料である。また最近の寄贈によって,同党の群馬・長野・神戸がまとまっている。労働農民党の後継組織である新党組織準備会は3ファイル,政治的自由獲得労農同盟は4ファイルある。後者の『労農同盟ニュース』は大部分が保存されている。大山郁夫らの労農党は5ファイルあるほか,1930年作成の『労働農民新聞』の発送名簿もある。
日本農民党資料は1ファイルだけである。
社会民衆党資料も7ファイルと少なく,うち3ファイルはパンフレットである。同党から分裂した全国民衆党は1ファイルである。
日本労農党に始まるいわゆる中間派政党の資料は大量に保存してある。同党資料は3段あり,大会などの会議の手書き速記録や発信簿,支部調査表を含んでいる。日本大衆党は3段半で,2ファイルの「清党事件」のほか,受信書簡の綴りや機関紙発送名簿も残されているが,その資料の半分は地方組織のものである。全国大衆党は2段強あり,受信の書簡がはいっている。全国労農大衆党は1段半,「対支出兵反対方針」に関する諸資料のほか,日本大衆党以来の東京・四谷支部の「日誌」(ノート1冊)などがある。
社会大衆党資料は1段半あるが,その半分は東京を主とする地方の資料で,またパンフレットが多い。
地方政党の資料は,まず総同盟などの地方政党主義によって結成されたものでは,九州民憲党が1ファイルにまとまっており,数点しかない足尾立憲公民党と千葉民政党の資料は他の地方政党とともに,「地方政党」ファイルに収めてある。労働農民党解散後の地方政党のうち,労農派と日本大衆党脱退派の関係では,無産大衆党,日本大衆党分裂反対同盟,東京無産党が各1ファイルあり,統一無産党など4政党は無産政党戦線統一全国協議会資料とあわせて1ファイルに収めてある。無産政党統一協議会系の6政党は労農大衆党が2ファイルあり,他の5政党と同協議会とで1ファイルになっている。また東信無産派選挙対策委員会(東信無産派)が1ファイルあり(コピー資料),合同問題は各合同ごとにまとめ,合計4ファイルある。
以上のうち,一部は別置してある。すなわち,黒田寿男,下坂正英,高岡孟子,山崎稔の各氏旧蔵資料がそれである(1930年まで)。また,旧協調会の無産政党関係資料には,1)同会職員の肉筆の報告の合綴(9冊。1931年の全国労農大衆党まで),2)『協調会文庫目録(和書の部)』(法政大学図書館)所蔵の資料がある。1)には僅かながら原資料も含まれている。2)には同会の報告書(謄写版)のほか,社会大衆党のパンフレットがはいっている。なおパンフレットは,一般図書として登録されたものもある。
(大野節子)
『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より
更新日:2014年12月22日