法政大学大原社会問題研究所 オイサー・オルグ  OISR.ORG 総合案内

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IV 定期刊行物 2.戦後の機関紙誌

(6)社会・労働関係一般新聞・雑誌

 当研究所には,占領期のものを中心に,社会労働関係の一般新聞・雑誌を約60タイトルほど所蔵している。まず新聞について紹介すると,松本重治を社長に長島又男・栗林農夫・中村英一ら同盟通信社の左派の人たちが1945年11月30日に創刊したオピニオン・ペーパーの『民報』がある。『民報』は,戦後日本で最初に創刊された夕刊の日刊紙で,のち『東京民報』と改題され,1948年11月まで続いたが,天皇の戦争責任問題を日本の新聞で初めて取り上げ,また新憲法の日本政府による意図的な誤訳を指摘して主権在民を明確にさせるなど,その論説は大きな反響を呼び,GHQが日本の世論動向を知るうえでもっとも注目した新聞の一つであった。研究所では,1991年6月,これを全8巻にまとめ,法政大学出版局から復刻した。原本は,中村・栗林両氏から寄贈されたものである。

 『民報』と並んで特筆されるのは,民衆新聞社から発行された『民衆新聞』であろう。『民衆新聞』も同じ1945年11月15日,人民戦線の結成を標榜して創刊されたオピニオン・ペーパーで,社長の小野俊一は当時,日本社会党の中央執行委員であり,主筆は砂間一良であった。1946年1月10日,山川均が「人民戦線の即時結成」を提唱したのは同紙の第11号においてであり,『民衆新聞』は事実上,民主人民戦線運動の中央機関紙の役割を担っていた。なお,『民衆新聞』はのち『人民新聞』『人民しんぶん』『新東京』と改題され,1949年までつづいた。欠号が多いため,現在その補充に努めている。

 時事通信社の『時事通信(政治労働版)』(日刊)も注目される。『時事通信』はほかに産業経済版も発行していたが,のち新聞単一(日本新聞通信放送労働組合)の委員長を務めた川添隆行が編集責任をになう政治労働版は,占領期の政治動向や労働運動の推移を克明に記録・報道している。社会労働関係の日刊紙・週刊誌としては週刊労働情報社の『労働情報』,日本労政協会の『週刊労働』,産業厚生時報社の『産業厚生時報』などもある。いずれも現在では,労働省編の『資料労働運動史』などと並び,占領期の社会運動を研究する際の基本文献となっている。

 占領期に簇出をみた左翼評論誌も注目される。占領期の雑誌メディアにおける特徴の一つは,戦後改革へ向けた提言・提案をなす評論誌や,婦人参政権の獲得など“女性解放の時代”の到来を背景とした女性雑誌の創刊にあった。

 前者は,佐和慶太郎の『人民』(人民社),伊藤長夫の『人民評論』(伊藤書店),有賀新・戸田慎太郎らの『民主評論』(民主評論社),大竹博吉の『社会評論』(ナウカ社),小森田一記の『世界評論』(世界評論社)などに代表される。これらの評論誌は,当時の革新的な世論をリードしただけでなく,その論評は「民主革命」を担う立場からなされ,日本共産党の機関誌『前衛』と並び,革新陣営に大きな影響を与えた。これらの雑誌は,社会情勢の激変期にあって存外散逸が著しいが,研究所では完全にバックナンバーを揃えている。なお,後者の女性雑誌については,向坂文庫に改造社の『女性改造』や新女性社の『新女性』などがある。

 さらに,この占領期の個性的な雑誌として,毎日新聞社・日本労働協会の『労働評論』や,中西伊之助が中心となって発行した『人民戦線』(人民戦線社),群馬県伊勢崎市で印刷業を営む吉田庄蔵が個人経営で発行した革新総合雑誌『潮流』(吉田書房,のち潮流社)などもあり,現在も閲覧者が多い。

(吉田健二)

『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より

更新日:2014年12月22日

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