III 文庫 1.協調会文庫
(4)洋書
大原社会問題研究所が協調会文庫の図書を管理するようになったのは,1973年に社会労働問題研究センターが発足してからである。協調会文庫の洋書は単行本とパンフレットとに区分される。単行本は,約8,600冊,パンフレットは約6,600冊が所蔵されている。
協調会文庫は,社会問題,労働問題,経済学を中心とする特殊な分類方式を採っている。この分類については,不統一や疑問点もあるが,協調会が当時どの分野に重点を置いて図書を収集しようとしたかをうかがい知ることができ,それ自体として興味深いものである。蔵書の範囲は,社会・労働問題が中心であるが,政治学,社会学,歴史などの分野にも及んでいる。蔵書数は,筆者の調査によれば,社会思想1,073冊,労働問題1,963冊,社会問題741冊,経済2,345冊,法学300冊,政治学667冊,哲学142冊,宗教47冊,心理学117冊,教育250冊,社会学239冊,歴史312冊などとなっている。
洋雑誌については,『法政大学逐次刊行物目録(昭和50年3月末日現在)』,単行書については『協調会図書・資料文庫蔵書目録』を利用して内容を把握することができる。
『協調会図書・資料文庫蔵書目録』は,手書き(筆記体)によるもので,〈洋書之部〉は4分冊になっている。この目録を利用するためには,まず,協調会文庫洋書の分類表を参照した方がよいであろう。この分類表は,『協調会文庫目録(和書の部)』のはしがきに掲載されているが,この分類表によって協調会文庫洋書の構成全体を見渡すことができる。
図書とパンフレットにはこの分類の中で一連番号を付したラベルが貼ってあり,その順序で配架されている。図書担当(若杉隆志氏)の話では,1999年現在,この配架記号と図書の書誌データとを統合させる作業を続けており,まもなく終える,その後文献データベースに統合する,とのことである。
蔵書のなかには,シャルル・アンドレール『ドイツにおける国家社会主義の起源』,エドガー・ミローの『社会主義への歩み』などもある。定期刊行物という点では,労働組合の分類などの中に,TUCやCGTの大会議事録も若干含まれている。また,国際労連(アムステルダム・インター)関係の資料もある。
また,単行本については,協調会当時作成されたカードが残されている。ただし,このカードに記された番号は本の配架の順序とは無関係であり,カードの番号によって直接,本を請求することはできない。
パンフレットについては,協調会による分類はなされていない。どのようなものがあるかを知るためには,目録の〈洋パンフレット之部〉(3分冊)を利用する。これも手書きである。この目録については,分野別の分類がなされていないため,全体の構成を見渡すことはできない。ただし,パンフレットの場合には,この目録の順に配架されているので,これによって図書を請求することができる。パンフレットの特徴として,目につくのは,アメリカ労働省,イギリス労働省,ILOなどの公的機関で出版されたものが多いことである。国別には,アメリカ,イギリス,ドイツ,フランス,イタリア,オランダなどで発行されたものが大多数を占める。パンフレットのなかには,『産業国有化』『ファシズムとは何か』『CGT経済社会革新プラン』などCGT関係のものも少なくない。
出版された時期という点では,単行本・パンフレットともに,19世紀に発行されたものは若干存在するが,全体としてみると1910年代後半以降のものが多く,古本として収集されたものはそれほど多くはないようである。
(佐伯哲朗)
『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より
更新日:2014年12月22日