III 文庫 1.協調会文庫
(3)和雑誌
『協調会文庫目録』(和雑誌の部)に「雑誌」篇がある。そこには,和雑誌のみ424タイトルが載っている。『法政大学逐次刊行物目録』には,単行本として扱われている定期(逐次)刊行物も載っている。他に,目録カードが別置されている。雑誌(協調会文庫)の分類は,主題別ではなくアルファベット順になっているため,424タイトルある和雑誌を主題別に何タイトルあるか,分けて述べることはできない。全体は,わりに幅広い分野にわたるが,政治,経済,社会科学一般がやはり主である。宗教,歴史,自然科学,技術,芸術,文学は希薄である。法大図書館,大原社研の所蔵を上回るのは,国際,外交,特に旧植民地関係や,経営,産業,労務管理関係,また業界報等である。これはもちろん,(財)協調会設立の1919年頃から,財団が解散する1946年頃までである。
以下,参考までに,大原社研,法大図書館に所蔵していないものなどを挙げておく。総合雑誌で,まず目をひくのは,いまは完全復刻されているが,『国民之友』の原本を,創刊直後の1889年から廃刊直前の1896年まで,多少欠号はあるがほとんど所蔵していることであろう。また,総合雑誌ではないが,戦前の『唯物論研究』の原本も1号(1932年)から63号(1938年)まで,完全に所蔵している。
国際・国外,大陸関係をみると,鈴木文治等の内外社会問題研究所『内外社会問題調査資料』(後『内外労働週報』)は1(1928年)~603(1944年)までを,調査資料協会の『内外調査資料』は1(1929年)~8(1936年)までをほぼ完全に所蔵している。『支那』『支那時報』『台湾時報』『東亜経済月報』『東亜旬刊』『蒙古』,その他,中国,台湾,満州,朝鮮に関わるものがかなり豊富にある。そのなかには,満州鉱工技術員協会の『鉱工満州』,浜江省農事合作社補導委員会の『農事合作社報』という,個別報等も見受けられる。
経営・産業方面では,大阪工業会の『工業』が1号(1926年)から197号(1942年)までほとんど揃っているのが目をひく。日東社の『工場パンフレット』(前身『経営パンフレット』)が100号(1923年)から1406号(1934年)まで,『マネージメント』が2巻(1925年)から17巻(1940年)まで,他に,月刊『帝国農会報』10巻(1920年)~32巻(1942年),月刊『農村工業』1巻(1934年)~10巻(1943年)等がある。社会・労働運動関係は,大原社研に比べて少ない。以下のものが大原社研の雑誌を補完している。
堺利彦の売文社発行『新社会』は,2巻1号(1915年9月)から3巻11号(1917年7月)まである。これは,大原社研にもない。大鐙閣発行の『解放』2巻(1920年)~5巻(1923年),虚無思想研究会の『虚無思想研究』(後『虚無思想』),全日本無産者芸術連盟『戦旗』1巻(1928年)~4巻(1931年),白揚社『マルクス主義の旗の下に』2号(1930年)~25号(1933年)。
社会主義出版所(平民大学)『社会主義』1(1920年)~9(1921年),プロレタリア科学研究所『プロレタリア資料月報』1~7(1931年)は完全にそろっている。また,協調会発行の月刊『協調』1(1937年)~16(1938年),月刊『労働雑誌人と人』1(1921年)~8(1928年)等もある。他に,救済事業研究会事務所『救済研究』1918~19年,中央社会事業協会『社会事業彙報』1935~39年,大阪社会事業連盟『社会事業研究』1931~42年,中欧融和事業協会『融和事業研究』1931~40年,産業労働調査所『産業労働時報』1929~1933年,労働科学研究所『労働科学』1924~1943年,労働経済社『労働経済』1930~1935年,等々がある。最後に,宇野利右衛門の工業教育会(大阪,1909~1934年)が出していた『職工問題資料』をはじめとする幾種かの逐次刊行物について紹介しておかねばならぬだろう。それは大正期から昭和初期にかけての,労働問題に関する第一級の資料である。その膨大な資料は,いまはほとんど散逸している。それをこれほど多量に持っている機関はどこにもないはずである。
宇野利右衛門(1875~1934年)が設立した工業教育会(宇野の死後解散)が刊行した資料は厖大である。最も多量な『職工問題資料』(パンフレット)はAからGにわかれ,月3回ないし1回発行され,全部で2,255冊に達するといわれる。一部は,間宏氏,杉原薫氏等の手によってリスト化されているが,なお全貌はあきらかでない。協調会文庫は,そのうち1,823冊を所蔵しており,全体の80%をカバーしている。
(立花雄一)
『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より
更新日:2014年12月22日