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II 図書 4.特色ある図書

(5)経済学関係洋書

 戦後の大原社研の活動の中心は労働問題に移行し、経済学の古典文献の収集は戦前のものが中心である。しかし、マルクス以前の経済学の古典を中心に良いものが残されている。1981年には特別の予算をとって17世紀から19世紀を中心とする経済学の古典を購入したが、この中には重商主義、重農主義、古典派経済学などの貴重書が含まれていた。

 

 重商主義関連では、ダヴェナント(Charles Davenant, 1656~1714年)の『戦費調達論』の初版(1695年)、チャイルド(Josiah Child, 1630~1699年)の『新交易論』第4版、バーボン(Nicholas Barbon, 1640(37?)~1698年)の『貨幣軽鋳論』初版(1696年)など、自由貿易論の先駆者達の著作がある。

 

 重農主義の著作では、ケネー(François Quesnay, 1694~1774年)の全集、その弟子ヴィクトール・リケッティ・ド・ミラボー(大ミラボー)(Victor Riquetti de Mirabeau, 1715~1789年)の主著『人間の友』(1758~60年)、その次男でフランス革命期の立憲君主制論者オノーレ・ミラボー(Honoré-Gariel Victor Riquetti Comte de Mirabeau, 1749~1791年)の書簡集、ケネーの友人で弟子でもあり、財務総監テュルゴーの補佐役でもあったデュポン・ド・ヌムール(Pierre Samuel du Pont de Nemours, 1739~1817年)の財務問題についての報告書を所蔵している。

 

 古典派については、部数は少ないが貴重な著書が含まれている。スミス(Adam Smith, 1723~1790年)の『国富論』の初版(1776年)及び第2版、『道徳情操論』1790年版、マンデヴィル(Bernard de Mandeville, 1670~1733年)『蜂の寓話』(1733年版)、マルサス(Thomas Robert Malthus, 1766~1834年)『人口論』初版(1798年)、『穀物法及び穀物価格騰落の我国農業及び一般的富に及ぼす諸効果に関する諸考察』第3版(1815年)、リカードウ(David Ricardo, 1772~1823年)『ビュイヨン会議報告に対するボーザンケット氏の所見への回答』(1811年)や『経済学及び課税の原理』第3版(1821年)、ジェームズ・ミル(James Mill, 1773~1836年)の『英領インド史』初版(1817年)、その子のジョン・ステュアート・ミル(John Stuart Mill, 1806~1873年)の『自由論』初版(1859年)、『経済学原理』1871年版等である。

 

 研究所の戦時中の業績である『統計学古典選集』の原本も貴重書が多い。稀覯書中の稀覯書で、世界に3冊とないといわれるジュースミルヒ(Johann Peter Süßmilch, 1707~1767年)『神の秩序』初版(1741年)(他に第2版も所蔵しており、向坂文庫には第3版がある)、グラント(John Graunt, 1620~1674年)『死亡表に関する自然的及び政治的諸考察』第4刷(1665年)(他に1676年の第5版も所蔵している)、ペティ(William Petty, 1623~1687年)『政治算術五論』初版(1687年)などである。

 

 近代経済学については比較的手薄である。英国における19~20世紀の社会福祉、医療、社会政策の歴史から古典派の主要人物の著作を復刻したデヴィッド・グラッドストン編『エドウィン・チャドウィック:19世紀の社会改革』(1997年)がある。

 

 またこれらの著作のうち、ジュースミルヒ『神の秩序』は高野岩三郎と森戸辰男が、グラント『死亡表』は久留間鮫造が、ペティ『政治算術』は大内兵衛が翻訳をしており、大原社会問題研究所が日本におけるこの分野の研究発展に大きく貢献してきたこと示している。

 

『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より

※なお、4.「特色ある図書」の(5)経済学関係洋書については、伊東林蔵兼任研究員が加筆修正した(2019年11月)。

更新日:2019年11月22日

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