VI 戦後の原資料 1.社会・労働運動関係原資料
(1) 産別会議本部資料
全日本産業別労働組合会議(略称・産別会議)の本部資料は,日農資料,松川事件資料,国労資料,総評資料,さらに向坂文庫や鈴木文庫の原資料などと並び,当研究所でも特筆されるコレクションのひとつである。
本資料は,産別会議と全労連に関する原資料および機関紙誌,パンフレットなどの出版物からなり,1958年2月に産別会議が解散したのに伴い,翌59年5月に産別会議記念会から寄贈されたものである。この資料は,その成立から解散に至るまで産別会議が発行し,あるいは加盟単産・単組から上がってきたもので,便宜的にa本部資料,s単産資料,d地方産別,f運動・争議,g大衆団体,hその他,に分けてある。
a 「本部資料」は,産別会議準備大会と各年次の大会(1946年6月の結成準備大会~58年2月の第8回臨時大会)のほか,幹事会,執行委員会(拡大中央執行委員会を含む)などの大会・執行部資料(1946年~57年),それに本部の庶務記録・日誌・会計簿,通達,受領文書,各部資料(調査部,婦人対策部,法対部,文化部,機関紙部ほか)などから構成されている。資料は,「大会」関係だけで24ファイルに上っているように,産別会議資料の中では最大の量となっている。
s 「単産資料」とは,産別会議に加盟していた各単産の資料をいう。途中脱退した単産もあるが,加盟していた時期のものは残っている。列挙すると,新聞単一,全逓,印刷出版,映画演劇,電産,石炭(全炭),電工,全日本機器(機器・金属,大金属),化学,全鉄労,自動車,車輛,港湾,木材,教育(全教),生保,医協,国鉄(東京),全日通,水産など23単産に及ぶ。
これらの単産資料で最大は全逓である。全逓だけで22ファイルもあり,それに化学の19ファイルとつづき,少ない単産でも2,3ファイルはある。なお,全逓関係では,元委員長の土橋一吉氏から寄贈された25ファイルの原資料も収めている。また電産関係では,現在はhの「その他」に分類されているが,電気事業再編成,電気事業民主化,日本発送電関係の資料もあり,それらを合わせるならばかなりの分量になる。ただし,これらの資料は寄贈を受けた当時の袋詰めのまま配架されており,未整理である。
d 「地方産別」は,沖縄県を除く都道府県を網羅し,全部で55ファイルに及んでいる。この「地方産別」の資料には,「関東」「東北」などの地方ブロックのファイルも混在している。例えば「関東」のファイルには,東京,埼玉,神奈川,千葉,茨城,栃木各都県の資料も含まれている。これは,寄贈を受けた時点の分類に従ったからであり,閲覧の際は注意願いたい。従って,地方産別関係の資料を閲覧する場合,例えば神奈川県地方産別会議に関する資料を探すときには,「神奈川」のファイルのほか,「関東」のファイルも併せて見ていただきたい。
f 「運動・争議」は,その量が最も多く,かつ注目される資料である。産別会議関係資料の閲覧で請求が多いのも,この「運動・争議」関係の資料である。これには,産別10月闘争,メーデー,産別民同,読売争議,2・1スト,国鉄・海員スト,生産管理闘争,行政整理・企業整理反対闘争,地域人民闘争,政令201号闘争,世界労連,レッドパージ反対闘争など,産別会議が取り組んだ諸運動の資料が豊富に収められている。
ただし,当該の運動関係資料がすべてここに一括して分類され,収められているわけではない。すなわち「運動・争議」資料は,資料自体,分散的に所蔵されているのである。従って,例えば生産管理闘争として展開された東洋時計上尾工場争議に関する資料を探す場合は,多少面倒であるが,まず「運動・争議」のうち「生産管理闘争」関係のファイルを閲覧されたい。次にa「本部資料」の1946年と47年の年次ファイル,s「単産資料」の全日本機器関係のファイル,d「地方産別」のうち「埼玉地方産別」と「関東」のファイルを閲覧されたい。
g 「大衆団体」には,産別会議が主導し,あるいは参加して展開した各種の大衆団体の組織と運動に関する資料が収められている。産業復興会議,経済復興会議,労農連絡会,民主主義擁護同盟,教育復興会議,平和擁護日本委員会,労農救援会,民主婦人協議会,自立劇団協議会など,10数団体に及んでいる。このうち産業復興会議と経済復興会議については,ようやく資料整理が済み,資料目録も作成中であり,2000年中にはコピーにて閲覧ができるようになると思う。
h 「その他」は,加盟単産および単組の労働協約,各種の調査報告書,幹部らの覚書き,投書などである。
産別会議本部資料には,以上に紹介した原資料のほか,機関紙『労働戦線』をはじめ,『情報』『週刊情報』『調査資料』『週刊旬報』『働くなかま』『産別情報』『労働者』などの定期刊行物がある。現在も,保存状態・欠号などを継続して調査中である。また,産別会議出版部が「産別シリーズ」として発行した森長英三郎『生産管理の合法性』,横山不二夫『労働組合と政治活動』などのパンフレット,同教育部が発行した『メーデーの話』(第1集),『世界労連の旗の下に』(第2集)などのリーフレット,その他調査部,文化部発行の各種出版物も所蔵している。さらに全労連に関する原資料や,『全労連ニュース』『全労連情報』『全労連統一闘争ニュース』などの機関紙もある。
このほか,産別会議と加盟単産が開催し,あるいは参加した各種集会のポスターもあるが,これについては「画像資料」の項を参照されたい。
(吉田健二)
『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より
更新日:2014年12月22日