VII その他 4.音声資料
ここでいう「音声資料」とは,社会運動の活動家・関係者から行ったヒアリングのテープや,研究所における特別・月例研究会などで報告された社会問題・社会運動史に関する報告テープなどをさす。
研究所は,1969年から《覆刻シリーズ・日本社会運動史料》を,1991年から《戦後社会運動資料》の刊行事業を始めたが,ヒアリングテープの多くは,これらの文献復刻の解題執筆に伴う調査の一環として試みられたもので,それ以外には加藤勘十,上条愛一,山名義鶴,三宅正一,神山茂夫,山辺健太郎,森戸辰男,棚橋小虎,平野学などの運動家・指導者などからもヒアリングを行っている。聞き手は,主に田沼肇・二村一夫・斎藤泰明・吉田健二らの研究員で,ほかに村山重忠,高橋彦博氏らが参加している。
この「音声資料」で“目玉”となっているのは,産別会議研究会が行ってきた日本共産党幹部や産別会議の指導者,および戦前・戦後初期に左翼ないしリベラルな視点から言論・出版人として活躍されたジャーナリストからのヒアリングである。前者では,長谷川浩,椎野悦朗,春日正一,細谷松太,吉田資治,戎谷春松,三戸信人,足立長太郎,津々良渉,中原淳吉らで,後者は,長島又男,中村英一,佐和慶太郎,小林栄一郎,殿木圭一,川添隆行ら計70人に及ぶ。聞き手は,おもに吉田健二である。
また,研究会などの報告には,大内兵衞「世界経済の中の日本」(1959年12月),遠山茂樹・藤田省三・斎藤泰明ほか「戦前労農運動における社会民主主義の研究」(1963年6月),久留間鮫造ほか座談会「太平洋戦争下の労働者と労働運動を回顧する会」(1965年12月)などもある。
なお,これら産別会議研究会や戦後社会運動研究会が行ったヒアリングのうち,本人および遺族の了解を得た方については順次,『大原社会問題研究所雑誌』においてその証言を発表している。このうち産別会議の指導者の証言については,1996年3月に『証言 産別会議の誕生』(総合労働研究所)を出版している。また2000年3月にも,産別会議の運動に関する証言を集成した『証言 産別会議の運動』(御茶の水書房)を出版することになっている。
(吉田健二)
『大原社会問題研究所雑誌』No.494・495(2000年1・2月)、創立80周年記念号より
更新日:2014年12月22日